遊びが次々生まれる創造空間-大森みのり幼稚園

1.びっくり山ゾーン ― 子ども×山砂×水=無限大
山砂の砂場はびっくり山ゾーンと園で名づけました。
案内板は副園長手作りです。
子どもが描いた水路の地図。びっくり山を舞台にした
壮大な遊び場の「設計」です。
「ぼくねー、昨日ねー」手を動かしながら、子ども同士で
会話も弾み、交流も深まります。
始めは大人が手を広げたくらいの範囲で、
山砂の砂場に溝や穴を掘っていた子ども達。
ガチャポンプ設置をきっかけに、
出した水が子ども達の掘った穴に溜まり、
「池」ができるようになりました。
次第に園庭からは「池を4つつなげよう!」
「女の子の池つくろう!」といった声が聞こえるように...。
「家で地図つくってくる!」そう言ってある男の子は、
自ら砂場の「水路」の地図を描いて幼稚園に持ってきました。
毎日のようにみんなで「池」を創り、溝を掘り「水路」を創り...。
今日、明日へと持続する遊び場
砂場にたっぷり使われている山砂は
粘土質で水を洩らさないので、
掘った溝や穴の跡が残り、
遊びが今日、明日、あさってと持続し展開していきます。
子ども達の想像力が、決して1日で終結することのない
豊かな遊び場です。
今では砂場中にできた「池」や「水路」。
それをぴょんぴょんと飛び越える子ども達。
時には「池」を飛び越えきれず、ずり落ちる子どももいます。
コンクリートの上では味わえないこと
飛び越えきれない経験も大事、という副園長。
「今の子は整備されたところしか歩いてないでしょ。
バランスを崩して池に落ちる、ぬかるみに足をとられる、
滑り落ちそうになってヒヤリとする、
こういう微妙な身体感覚の体験が、
小さい頃は大事だと思うの。」
変化のある砂場は、地面の大小の凹凸に合わせ、
全身を柔軟に調整する経験が味わえる場でもあります。
「以前にあった鉄の硬い山の遊具だったら、
登って滑って穴に入るだけでしょ。
同じ山でも材質が自然のものだったら、
子どもの遊びが全然違うの。
掘るし、埋めるし、登るし、
自分の手で変化を楽しむことができる。」
と山砂の魅力を語られました。
遊び込みながら形を変えていく山砂の砂場。
みんなの協同作業で子ども達自身が創り出していった、創造的な遊び場です。
2.ハラハラ!ドキドキ!スリルがいっぱいの丸太橋
朝、子ども達が園庭に出てきて、ガチャポンプ遊びを始めると、
川ができ、しばらくすると、山砂の砂場に大きな池ができます。
その上に丸太の橋をかけよう、と副園長がひらめきました。
「わー、こわそう」「大丈夫かなー」「できるかなー」「わたし、できる!」
橋を渡る子は、どの子も足元に全神経を集中し、
落ちないように小刻みに揺れながらバランスをとって恐る恐る渡ります。
橋は、丸太なので足元はとても不安定。
もし、バランスを崩して落ちたら泥池が下で待っています。
「キャー!」やっている子も、見ている子も、ハラハラドキドキ。
取り付けた時は、丸太だから子どもたちは難しくてやらないかな、
と予測していたのは大ハズレ。
「やってみる!」と行列ができました。
『子どもたちは、スリルが好き!』と再認識する機会となりました。
バランスが崩れて、ドボンと池に落ちて泥んこになった子も泣きません。
「汚れたら着替えればいいんだもんね」
...子ども達は、困った時の対処の仕方をきちんと知っているから、
不安になりません。だからこそ、チャレンジもできるのでしょう。
渡る前と違って、渡り終えた時の子どもの表情は、
ふっとゆるみ、ニンマリ。『できたぁー(ほっ)』
小さい頃のこんな経験の積み重ねが、
人生の荒波を乗り超える力につながっていくのかもしれません。
「土留め」も遊び場
山砂の流出を防ぐ自然木の土留めは、 子ども達にとってちょうど良い形状で、
様々な行動を誘う遊び場となっています。
マラソン&三輪車コース
砂場の周囲にぐるりとコースをめぐらせています。
一周ごとに自分で○印をつけられるカードで意欲を引き立てます。
70周7キロで金シールがもらえます。
何回でも周ることのできる回遊性は、
遊び込める場所のもつ重要な特徴です。
3.園庭の木々には子ども達と植物をつなぐ「物語」が記されています。
物語はルビつきで、子どもたちは読みながら木々を周ります。
みのりの森の木物語 キンモクセイ
私の名前はキンモクセイ。
「キンモクセイのキンモクさん」って呼んで欲しいわ。
秋になると、とってもいい匂いの、小さなオレンジ色の
可愛い花を沢山つけて「もう、秋がきましたよ」って、
みんなに静かに教えてあげるの。
中国という国ではね、キンモクセイの木は、
月からきた仙人(高い山の中に住む不思議な力を
持ったおじいさん)の木で、 「仙木」と言われているの。
月夜の晩には、みんなに知られないように、
こっそりと月とお話をしているのよ。うふふ...。
みのりの森の木物語 かしの木
ぼくは、かしの木。「かしの木のかっちゃん」って呼んでいいよ。
かっちゃんはね、いつも、ここで、みんなの事を見ているんだ。
どろだんごを、
「うまくできなーい、せんせいやってー」
と言っていた子が、
だんだん上手に一人でできるようになるのを見ていると、
とても嬉しくなるんだよ。
ほら、あの子。おだんごがこわれても、
何度もまたやっているよ。えらいなー。
おだんごはまだ光らなくても、目が光ってるのを、
かっちゃんは知っているよ。
かっちゃんも、ここに来た時は、
小さなどんぐりしかつけられなかったけど、
今は大きな、どんぐりをつけられるようになったのさ。
かっちゃんは、どこにもいかない。
ずっとここにいて、いつも、みんなのことを、
しっかり見ているからね。
...読めない子どもに読んであげると、
「かっちゃんありがとう」と、
木の幹をなでてくれました。
4.環境教育に役立つビオトープ池
池のまわりには、水生植物、苔、糸すすき、
ムレチドリバゼ、岩ひば、ほととぎす、藤ばかま等、
20種類以上の植物を植えました。
今後はメダカやタニシも飼い、
多様な生物の棲める場所にし、
子どもの原体験を大事にしていきます。
1.環境教育
苔を多くあしらい、ビオトープの色合いに深みを添えると共に、
地球温暖化防止にささやかな貢献をしています。
苔は、4億年前から地球に生存しているともいわれる生物です。
発見!新設してから半年、カエルが卵を産みました。
2.雨水タンク
ビオトープに流れる水は雨水を利用しています。
タンクは木の小箱で保護すると共に、
見た目にもきれいに整えています。
3.小鳥の蛇口
雨水は飲料水ではないので、
蛇口を小鳥形にし設備環境を工夫することで、
「小鳥さん用の水だから飲めない」ことが
子ども達に分かるようにしています。
バケツで山砂の砂場にも水を運べます。
5.進化する園庭、意欲増す子どもたち(園庭史~子ども達への願いを込めて~)
園庭の隅はプールでした。
プールを移設し園庭を拡張。
地面に凹凸ができる-遊具や土管トンネルの築山を設置。
山砂を追加して園庭全体が砂場に。
木々を植え、平面的だった園庭が森のようになりました。
びっくり山ゾーンが誕生!森の中で遊ぶ子ども達は、まるで原始の頃と同じ体験をしているよう。
「力いっぱいに、また自発的に、黙々と忍耐づよく、身体が疲れきるまで遊ぶ子どもは、また必ずや逞しい、寡黙な忍耐づよい、他人の幸福と自分の幸福のために献身的に尽くすような人間になるであろう。」
(フレーベル『人間の教育』より)





